武道を始めたいと考える人は、「どの武術を選べばいいのだろう?」と悩むことでしょう。私も最初、どの武道を習おうかと迷いました。
まだ決まっていないのであれば、「少林寺拳法」がおすすめです。
このコラムでは、少林寺拳法の有段者である筆者が、少林寺拳法について分かりやすく解説します。
少林寺拳法の概要を知り、少林寺拳法を習うかどうかの参考にしてください。
なお、道場を探すなら「武道・道場ナビ」で便利に検索できます。
この記事を書いた人
少林寺拳法弐段の有段者。
武道の疑問を解決する記事を書くので、ぜひ参考にしてください。
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少林寺拳法とはどういう拳法?
少林寺拳法を簡単に説明すると、「人づくりの行(ぎょう)」になります。少林寺拳法の修行では、日々の練習を通して、社会に役立つ人やリーダーになることを目指すのです。これは、「勇気」「慈悲心」「正義感」をもつ魅力あふれる人間になるための修行といえます。
以下に、少林寺拳法について簡単に解説しますので、ぜひ参考にしてください。
少林寺拳法のルーツ
少林寺拳法とは、宗道臣(そう どうしん)氏が日本で創始した独自の武術となります。そのルーツは、宗氏の祖父から修得した「日本の古武術」と「インド武術(天竺那羅之撹捔(てんじくならのかく)」、中国各地に伝わる「中国武術」です。
インド武術は、菩提達磨(だるま大師)が527年に中国に伝えたという伝説が残っています。だるま大師は、仏教の正しい教え(ブッダの教え)を広めるために中国へ来たのですが、迫害を受けて嵩山少林寺へ逃げ延びました。
だるま大師が少林寺で正しい仏教とインド武術を教えたことで、有名な少林拳が誕生したのです。
昭和初期に中国へ渡った宗氏は、拳法の達人である陳良(ちんりょう)老師の弟子となり、その後、中国各地に残る拳法を学び、北少林義和門拳を継承しました。
数々の武術を体系的にまとめ上げた集大成といえる拳法が「少林寺拳法」なのです。
少林寺拳法の本質
少林寺拳法は、単なる武術や護身術ではありません。確かに、自分や人を守るための手段としての武術という側面はありますが、本質は別にあるのです。
さきほど、少林寺拳法は「人づくりの行」であると説明しましたが、そちらが本質となります。
修行により「肉体」「精神」の両面を鍛えることで、「自己確立(自分が頼れる自分になること)」「健全な心を養う(自信・勇気・行動力・慈悲心・正義感を持った人間になること)」を目指す、【宗門の行】なのです。
「行」とは、「ぎょうにんべん」が2つでできています。少林寺拳法では、ひとりの人間が他の弱い人間を背負い、相対しながら、互いに向上していくさまを「行」と考えるのです。
つまり、少林寺拳法の修行を通して、自己確立と同時にお互いが助け合って向上をはかることが【宗門の行】ということになります。
少林寺拳法の独自性
前記した通り、少林寺拳法は、空手や合気道などの他の徒手空拳(としゅくうけん)※術とは性質が異なります。もちろん、「拳技修得」「精神修養」という基本の目的は同じです。ただ、少林寺拳法では特に「心のあり方」を修行で磨くことを大切にしています。
※徒手空拳とは、防具や武具を持たず、自分の拳だけで戦う拳法のことです。
心のあり方は、「人を助け、社会を牽引する真のリーダーになるため」に一番必要とされるものであり、少林寺拳法の独自性のひとつです。
少林寺拳法の独自性として、「私利私欲のために使わない」「先に手を出さない」というものもあります。「暴力や力で人を屈服させること」や「敢えて拳を使う」ことは厳禁なのです。
また、試合や勝ち負けを競わない(競技やスポーツではない)ことも大きな独自性といえるでしょう。
少林寺拳法の技や教え
少林寺拳法について、少しずつ理解してもらえたことでしょう。ここでは、少林寺拳法の技や教えについて簡単にまとめ、解説します。詳細については、また別のコラムで解説する予定です。
少林寺拳法の技は、「剛法(ごうほう)」と「柔法(じゅうほう)」「整法(せいほう)」の3つに分けられます。
また、少林寺拳法の教えは非常に奥深く、道徳と礼儀作法など精神面を鍛える「行」です。
少林寺拳法の技
それでは、少林寺拳法の技について解説します。「剛法」「柔法」「整法」のうち、武術として重要な技は、「剛法」「柔法」です。「整法」は身体を調整する技となります。
- 剛法について
剛法は、「突く」「打つ」「蹴る」「切る」などの技を主体とする打撃を用いる技であり、防御反撃を行う際に用いる技法となります。少林寺拳法は受け身からの反撃を基本とするため、こちらから攻撃することはありません。
- 柔法について
柔法は、「投げる」「押さえる」「締める」「固める」などを主体とする技で、相手の力を利用して防御反撃を行う際に用いる技法となります。
- 整法について
整法は、東洋医学における「整体観念」に根ざしたものであり、拳法を通じて健康増進を目指すものです。特に、技として学ぶものではありませんが、少林寺拳法が敵を倒すための武道ではないことを示しています。
少林寺拳法の教え
少林寺拳法の修行の目的は、「世の中を平和にするためのリーダーを作ること」です。「今、日本は平和なのになぜ?」と思うかもしれません。少し具体的に説明すると、「修行により自己を確立し、他者を生かし、社会に貢献できる人になることを目指す」ことが目的となります。
ただし、道徳ばかりでは自分の身や他人を守れないため、護身術としての拳法を身に付け、強い自分になることも重要な目的です。
つまり、少林寺拳法は、「厳しさ」と「思いやり(優しさ)」を身に付けて、人を指導・牽引する術を修得する「宗門の行」といえます。
「愛や理知をともなわない力は暴力」であり、「力や行動をともなわない愛もまた無力」なのです。愛と力の調和がとれた状態で、初めて正しい生き方ができるのです。
少林寺拳法は、自分を「拠り所(よりどころ)」にするために修行するもので、勝敗を目的とする武道やスポーツではありません。
少林寺拳法の特徴
上記したように、少林寺拳法は勝敗を競わないため、試合はなく、競技性はありません。ただ、2人1組で技を披露したり、団体で型を披露したりする「演武(えんぶ)」を披露し、技の正確性を審査する大会はあります(全国大会や世界大会など)。
なお、少林寺拳法では、以下に示す6つの大きな特徴(教え)があります。これらの特徴的な教えが、自己確立と他者を活かすことにつながるのです。
- 力愛不二(りきあいふに)
「力と愛は同じ価値と重要性を持ち、どちらも欠かすことができない」という教え
- 拳禅一如(けんぜんいちにょ)
「肉体と心は切り離せないもので、同時に修行して鍛錬する」という教え
- 守主攻従(しゅしゅこうじゅう)
「少林寺拳法の基本は、まず守り、そのあとに攻撃する」という教え
- 不殺活人(ふさつかつじん)
「少林寺拳法は、殺人拳ではなく活人拳である」という教え
- 剛柔一体(ごうじゅういったい)
「剛法と柔法に優劣はなく、相手の動きに合わせて剛柔を一体化させ対応する」という教え
- 組手主体(くみてしゅたい)
「練習の際は、必ず2人一組で行うことを基本とする」という教え
お伝えしたい宗道臣先生からの言葉
少林寺拳法に興味がある人には特にお伝えしたい創始者の宗道臣先生のお言葉を記載しておきます。
私が野球や空手などの他のスポーツではなく、少林寺拳法を習おうと決心した言葉です。
「半ばは己の幸せを 半ばは他人の幸せを」
いかがですか?
このような考え方の人が増えれば、戦争や貧富の差などの社会問題がなくなる世界になるかもしれません。
「他人のせいや家柄や親のせいにするなよ。社会のせいでもない。自分の人生を自分で歩んでいるのだ。」
最近、よく耳にする「親ガチャ」に対する戒めのような言葉です。1979年頃にも同じように考える人が多かったのかもしれません。確かに、今の自分は自分の選択の結果です。自分の人生は自分で決めることができます。他人を変えることは難しいですが、自分の考え方を変えることは、少しずつ気長にやればできるのではないでしょうか?
少林寺拳法の修行で得られるもの
このコラムでは、少林寺拳法について概要を解説しました。
少林寺拳法は、暴力は好きではないけれど、正義感が強い人には最適な武道です。万が一、暴漢や犯罪に巻き込まれそうになった時、自分の身は自分で守れるだけの技術をもっていれば、安心感が違います。
少林寺拳法を習うことのメリットをお伝えします。
- 人の痛みが分かるようになります。
- 感謝の気持ちも芽生え、心が鍛えられます。
- 自分の身を守れる技を修得できます。
まずは、近くの道場を「武道・道場ナビ」で検索してみてはいかがでしょうか?
なお、各内容については、別のコラムで詳細を解説する予定ですので、楽しみにしておいてくださいね。