剣道でかかとが痛いのはなぜ?まずは踏み込み動作の改善で対策を!

剣道を行う際は、基本的に裸足での稽古です。しかも、踏み込み動作があるため、かかとを痛める人も少なくありません。踏み込みには体重の約10倍の重み(最大1トン)が右足の裏にかかるといわれています。

大きな力が加わる右足のかかとは、一旦痛めるとなかなか治りません。誤魔化しながら稽古を続けようと思っても、かかとが痛いため、以前のように思い切った踏み込みができなくなるでしょう。

そこで本記事では、剣道の踏み込み動作でかかとが痛くなる原因と対策方法について紹介します。剣道の踏み込みは、現代剣道においてはもっとも重要な足運びです。

記事を読めば、かかとを痛める原因を理解できます。ぜひ、記事を読んでしっかりかかとの痛み対策をしてみてください。

剣道の踏み込みでかかとが痛いのはなぜ?

剣道でかかとが痛いと訴える人の多くは、踏み込みが原因です。じつは、剣道の踏み込み時には体重の10倍の力が加わるといわれています。たとえば、体重が50kgの人なら500kg。ときには約1トンの力が加わります。しかも、踏み込み足は剣道の基本となる足運びなので、避けることはできません。

『木刀による基本技稽古法』のように、踏み込み足ではなく摺り足で行う稽古方法もありますが、試合や昇段審査で実践するのは難しいでしょう。つまり、踏み込み動作は、1回の稽古で何十回、何百回と繰り返すことになります。

踏み込み足によってかかとを痛める真の原因は、大きな力で硬い床にかかとの一点を打ち付けることです。本来、足の裏は人の全体重を支えなければなりません。本来ならアーチ状になった骨格が衝撃を和らげます。したがって、かかと一点に力が加わるような踏み込み動作は想定外の負荷であり、かかとを痛める大きな原因です。

かかとを痛めないためには、足の裏全体で踏み込むイメージが重要となります。また、ごく稀に袴の裾の生地が折り重なった部分を強く踏んでかかとを痛めることもあるので、袴の長さにも注意しなければなりません。

剣道でかかとが痛い!主な5つの症状とは?

剣道において、かかとが痛い場合の主な症状には以下の5つがあります。

  1. 踵骨挫傷
  2. シーバー病
  3. 踵骨疲労骨折
  4. 離断性骨軟骨炎
  5. 踵骨下滑液包炎

もう少し詳しく解説します。

踵骨挫傷(しょうこつざしょう)

踵骨挫傷(しょうこつざしょう)の症状は、局所の激痛、圧痛、運動時痛、内出血などです。踏み込みなどの衝撃によって、かかとの骨(踵骨)内部の組織が損傷します。レントゲンやCTでは骨の異常は発見できないため、診断の難しい疾患です。

シーバー病

シーバー病は、かかとの骨(踵骨)の成長板に炎症が起こり痛みを伴う疾患です。踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)とも呼ばれ、かかとの骨の端骨(踵骨骨端核)がはがれたり、その手前の踵骨軟骨(成長軟骨:成長期に見られる軟骨)に炎症が起こったりします。

踵骨疲労骨折(しょうこつひろうこっせつ)

踵骨疲労骨折は一般的な疲労骨折と同様の症状です。繰り返し負荷がかかることで不完全骨折となります。剣道の踏み込み動作でのかかとの痛みとしては、踵骨疲労骨折がもっとも多いでしょう。

踵骨疲労骨折は運動時や圧迫時に痛みを感じます。

離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)

離断性骨軟骨炎(OCD)は関節部分で起こる症状です。したがって、かかとではなく、かかとの上にある距骨の前外側部や後内側部に発症します。成長期のスポーツ選手では、膝や肘に発症する例の多い疾患です。

具体的には、関節軟骨を支える軟骨下骨が壊死し、関節内の骨軟骨組織が損傷したりはがれたりします。

踵骨下滑液包炎(しょうこつかかつえきほうえん)

踵骨下滑液包炎(しょうこつかかつえきほうえん)は、踵骨の裏側にある滑液包に炎症が起こる疾患です。滑液包は地面からの衝撃を和らげるクッションの役割を果たす部分で、踵に衝撃がかかり続けることで炎症を起こします。

踵骨下滑液包炎の診断には、レントゲンよりもエコー検査の方が有効です。

剣道でかかとが痛いと感じたら?

剣道をしていてかかとが痛いと感じたら、それはすでに何らかの怪我と思って間違いありません。しかも、かかとを一旦痛めると、なかなか治らないため、安静にする必要があります。一般的に冷却が必要といわれますが、剣道におけるかかとの痛みは少しずつ損傷するため、冷却をしても大きな意味はないでしょう。

「かかとが痛いというだけで稽古を休むことはできない」
多くの剣道愛好家は、そう考えるのではないでしょうか。安静にして自然治癒してからの稽古再開が理想です。一方で、自然治癒を待たずに稽古を再開したい場合には、保護具の使用をおすすめします。

かかとの保護具としては、主に以下の2種類。

  1. ヒールカップ
  2. かかとサポーター

ただし、公式試合での保護具の使用は、申請が必要な場合があるので注意が必要です。また、保護具を着用して稽古することは可能ですが、踏み込みの動作自体を見直すチャンスかもしれません。ピンチをチャンスに変えてみてはいかがでしょうか。

それでは、上記の保護具について、もう少し詳しく解説します。

ヒールカップを使用してテーピングで固定

ヒールカップとは、かかと部分に挿入されるインソールやクッションのことです。剣道用に開発されたものではなく、一般に靴の中に入れて使用する商品で、かかとにかかる衝撃を吸収して分散させる効果があります。

剣道は裸足で行うため、稽古に使用する際にはテーピングでの固定が必須です。ヒールカップ自体は比較的安価で購入できますが、テーピング代がかかるため、長期間での使用は費用面のデメリットとなります。また、テーピングで固定する作業に時間がかかる点も考慮しなければなりません。

ヒールカップはさまざまな素材があるため、裸足で使用する際に最適なものを選ぶ必要があります。

かかとサポーターを使用する

ヒールカップの使用は手間がかかるため、できれば避けたいという方におすすめの商品が「かかとサポーター」です。かかとサポーターは、武道具店で取り扱っており、2,000円~3,000円で購入できます。

メーカーによって装着方法や衝撃性に違いがあるため、好みのものを選んでください。ただし、底面に滑り止めのついたかかとサポーターは試合で使用できない可能性があるので、注意が必要です。

かかとサポーターは愛用者も多いのですが、下記のようなデメリットがあります。

  • 長期間使用すると布部分が破れる
  • 価格が比較的高い
  • 踏み込みが下手だと認識される

とくに「踏み込みが下手な人」と認識されるため、かかとサポーターに頼らなくても良い踏み込み動作を身につけましょう。筆者はかかとのひび割れ予防のためにかかとサポーターを使用していたところ、「高段者なのに見苦しい」と指摘されたことがあります。

かかとが痛い原因「剣道の踏み込み」を改善する方法

前述したとおり、剣道の踏み込みでは足裏に体重の約10倍の力が加わります。その力をかかとだけに集中させるのではなく、足裏全体に分散させなければなりません。足裏全体に力を分散させることによって、足の前後方向の縦のアーチと横方向のアーチ構造が上手く機能します。

具体的な方法を解説しましょう。

踏み込み時の膝の角度を改善

足裏全体に力が加わるようにするには、踏み込み時に足裏が床と平行な状態でなければなりません。足裏を床と平行な状態で踏み込むには、膝の真下を踏む感覚が重要です。

つまり、膝の角度を90度に曲げ、膝の位置が足先の真上にある状態が好ましいでしょう。足先が前過ぎても、後ろ過ぎても、足裏を床と平行に保てません。

とくに前進時に足を前の方に投げ出すイメージになると、踏み込み時に足先を戻すことになります。これは剣道では「戻り足」といわれ、効率が悪く、かかとが先に床に着地する踏み込み方法です。

最初は難しいかもしれませんが、意識して取り組んでみてください。

体の重心を低くし、足指を広げて踏み込む

鹿屋体育大学などの研究論文『剣道における踏み込み動作の修正が右足踵部痛を緩和させた事例』には、下記のように書かれています。

競技者は、踵踏み込みを「つま先踏み込み」や「足裏全体踏み込み」に修正し、右足踵部痛を緩和させた。この右足踵部痛の緩和は、「体の重心を低くし右足指を丸める意識をした」ことで、踵に受ける衝撃が変わり、衝撃力や足底力を低下させたものと推察された。さらに、「足指を広げて踏む意識」をしたことにより、踵に受ける衝撃を足裏全体に分散したとも考えられる。

スポーツパフォーマンス研究『剣道における踏み込み動作の修正が右足踵部痛を緩和させた事例』

つまり、足裏だけでなく、足指の動きも重要とのこと。子どもたちの中には、見ただけで自然に真似できる者も少なくありません。しかし、もう少し動作を分解して、足指の動きなどにも触れることで、より上達速度が速まると思われます。

剣道でかかとが痛いときには踏み込みを見直すチャンス(まとめ)

本記事では剣道でかかとが痛い症状について、原因や対策方法を紹介しました。現代剣道において、踏み込みは一般的かつ重要な足運びの方法です。踏み込まずに稽古を行う方法もありますが、試合や昇段審査では有効ではありません。

かかとが痛い場合には、稽古を休み安静にするのが一番です。しかし、多くの剣道愛好家はかかとが痛い程度で稽古を休むことはせず、ヒールカップやかかとサポーターなどの保護具を使用して稽古に取り組みます。

かかとが痛い原因は踏み込み動作が正しくないことです。したがって、踏み込み動作を改善し、かかとを痛めないように稽古に取り組みましょう。

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