剣道で礼儀を大切にする理由とは?理由を知って技術向上につなげよう!

剣道は「礼に始まり、礼に終わる」とよく言われます。どうして剣道を始めとする武道全般は礼儀に厳しいのでしょうか。剣道では昇段審査に筆記試験が課され、「礼儀を大切にする理由」を問われることもあります。

あなたもご存知のように、剣道は一人で行うわけではありません。試合は相手が必要ですし、日頃の稽古においても自分ひとりで技を磨いたり強くなったりすることは不可能です。一方で、人と人が接する以上は礼儀が必要になります。つまり、礼儀は人のためだけではありません。礼儀は自分のためでもあります。

そこで本記事では、剣道で礼儀を大切にする理由について詳しく解説しました。

何気なく行っている礼儀作法を深く理解し、剣道の技術向上につなげましょう。

この記事を書いた人

野川正人

・剣道歴39年
・剣道 錬士七段
一般企業の会社員をしながら、地元中学校の剣道部外部指導員・少年団の指導者として日々活動中。自身の稽古にも継続して取り組んでいる。
剣道の疑問を小中学生や初心者の人にもわかりやすく伝えようとメルマガ、note、ブログにて発信。
2021年に著書「28回も不合格でしたが、なにか?」を執筆し、Amazonにて発売中。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0BSBB8SJ2

剣道で礼儀を大切にする3つの理由

剣道は「剣の理法の修練による人間形成の道」と理念に謳っているように、誰からも尊敬されるような人を育成することが目的です。したがって、礼儀を伴わない人間形成はあり得ません。

「剣道の理念」についての詳細は、下記の記事を参考にしてください。

上記を踏まえ、剣道で礼儀を大切にする理由を考えると、以下の3点に要約されます。

  • 相手への感謝を示す
  • 闘争心を抑える
  • 自己の成長のため

それでは、具体的に解説します。

剣道は相手への感謝を礼儀として表す

前述したとおり、剣道は相手がいなければ成り立ちません。もちろん、素振りや一人稽古などは可能ですが、対人競技であるため、必ず相手が必要になります。加えて、相手の頭や腕を叩かせてもらわなければ剣道の技術は向上しません。

一般的に、他人に自分の頭を棒で叩かれたら不快に感じるでしょう。しかし、剣道では常に相手を叩く必要があります。しかも、常に打突部位を捉えられるわけではありません。ときには剣道具に守られていない腕や背中、太ももを叩かれることもあるでしょう。

したがって「叩かせていただいて上達する」と、相手への感謝の意を礼儀で示す必要があります。

また、剣道の技術向上に欠かせないのが、共に稽古する仲間や指導者、保護者の存在です。仲間や指導者、保護者はよき理解者であり協力者なので、感謝を礼儀で表して伝える必要があります。

剣道で礼儀を大切にしなければならないのは、多くの人に支えられているからです。大切なことは、常に感謝の気持ちを忘れないことでしょう。

剣道は闘争心をあらわにしてはいけない

剣道が礼儀を大切にする二つ目の理由は、闘争心をあらわにしないためです。

剣道は対人競技であり、選手によっては思い入れの大きな大会もあります。「どうしても勝ちたい」との一心で、闘争本能をむき出しにする人も少なくありません。かつて、剣道の世界大会では試合に負けて礼もしない団体がありました。

人間形成を謳っている剣道において、上記のような態度は適切ではありません。したがって、剣道に取り組む際には闘争本能をある程度制御する必要があります。闘争本能を制御し、礼儀を重んじることが重要です。

剣道では、「礼に始まり、礼に終わる」と言われるように、闘争心を制御できずに礼ができないようでは剣道に取り組む意味がありません。

自己の成長のために礼儀を重んじる

剣道で礼儀を大切にする理由の3つ目は、自己の成長です。

多くのビジネス書には、「人が成長するには技術的なこと以上に礼儀が大切」と書かれています。同様に、剣道に取り組む際にも、成長には礼儀が必要不可欠です。

繰り返しになりますが、剣道は一人ではできません。また、一人での自己成長にも限界があります。したがって、仲間や指導者、保護者に支えられる必要がありますが、礼儀を重んじない人を支えようとは思えません。礼儀は人と人との間の緩衝材や潤滑液となり、摩擦を軽減させるものです。

自己成長には自分の弱さを知ることも欠かせません。とくに自分の短所を克服するには、自分の弱さを認める謙虚さと素直な心が重要です。謙虚さと素直な心は礼儀につながり、礼儀を重んじることで成長は加速するでしょう。

剣道で礼儀を大切にすることで得られる2つのメリット

剣道において、礼儀を大切にすることで得られるメリットがあります。主なメリットとして考えらるのは以下の2点です。

  • 相手への敬意を示せる
  • 自分自身の心を整えられる

それぞれ具体的に解説します。

相手への敬意は礼儀で示せる

稽古中や試合中に相手を圧倒するような気迫や攻めは必要です。一方で、相手への敬意を忘れてはなりません。相手への敬意は礼儀をもって示しましょう。具体的には以下のような方法です。

  • 相手を傷つけない
  • 相手に安心感を与える態度で臨む
  • 安全で快適な稽古や試合を行う

打突時に打突部位を外すことはしかたがありません。技術力が不足していると考えるかもしれませんが、実際には八段の先生方でも打突部位を外すことは多々あります。したがって、その後の態度が重要です。

打突部位を外されれば、誰もが不快な気分になりますが、試合中に謝罪するようなことはできません。しかし、試合後に謝罪をするような気遣いを見せれば、お互いに遺恨が残るようなことはないでしょう。

常に礼儀正しい態度を心がければ、お互いに気持ち良く稽古や試合ができます。相手への敬意を示すことは大きなメリットと言えるでしょう。

礼儀が自分の心を整えさせる

礼儀は心の安定剤です。礼儀を重視することで、仲間や指導者、保護者との関係を良好に保つことにつながります。関係性を良好に保つことで余計なことを考えなくてよくなり、結果として集中力が高まり、パフォーマンスレベルを押し上げられるでしょう。

礼儀を大切にすることで、稽古や試合の際には心を整え、安定した精神状態で臨めます。安定した精神状態は集中力を高め、よい結果へとつながるはずです。ただし、ここでのよい結果とは、必ずしも勝ち負けのことではありません。

剣道の礼儀は基本の礼法から!三通りの礼と蹲踞を意識する

剣道における礼儀作法はいくつもありますが、基本となるのは次の3種類の礼です。

  • 上席に対する立礼
  • 相互の立礼
  • 座礼

共通する注意点としては、節度を持ち真心を込めて折り目正しく行なうことでしょう。うわべだけの礼儀作法でなく、心から尊敬の意を表すことが重要です。

礼をしている時間はおよそ一呼吸。2種類の立礼は角度の違いがあります。上席に対しては約30度の礼、相互の礼は約15度の目礼です。

座礼は正座の姿勢で同時に両手を「ハの字」の形にして床につけ、三角の中心に鼻先を向けて静かに頭を下げます。以前は「左手」「右手」の順に手をつきましたが、近年は両手を同時につけるように変更されました。

また、蹲踞も礼法の一つです。広辞苑には、蹲踞について以下のように記載されています。

敬礼の一種。貴人の通行に出会った時、両膝を折ってうずくまり頭を垂れて行ったもの。また、後世、貴人の面前を通る時、膝と手とを座につけて会釈すること。

日頃の稽古では省略されることもありますが、蹲踞も正しく心を込めて行うことが必要です。

剣道の試合や稽古時の礼儀やマナー

剣道の試合や稽古の際にも礼儀は大切です。剣道の試合審判規則では、以下のような言動についての罰則もあります。

第3章 禁止行為
第1節 禁止行為事項
[非礼な言動]
第16条 審判員または相手に対し、非礼な言動をすること。

非礼な言動をした場合、「負け」と「退場」という非常に厳しい罰則が与えられることになっています。退場となる禁止行為は「非礼な言動」と「薬物使用」のみなので、どれだけ厳しいか理解できるのではないでしょうか。

そのほかのマナーとしては、以下のようなものがあります。

  • 剣道具は着座してつける
  • 床の竹刀を取るときには片膝をつく

禁止されているわけではありませんが、礼儀作法の一つとして覚えておいてください。

まとめ~剣道の礼儀は自分の成長のため~

本記事では剣道の礼儀について詳しく解説しました。剣道は「礼に始まり、礼に終わる」と言われるように、礼儀を大切にしています。礼儀を大切にする理由は以下の3点です。

  • 相手への感謝
  • 闘争心を抑える
  • 自己の成長

相手を思いやる気持ちがあってこそ、自己の成長があることを意識するとよいでしょう。礼儀を大切にする理由を知ることは、剣道が上達する近道です。仲間や指導者、保護者に感謝し、気持ちの良い稽古を行いましょう。

より強くなりたい場合には、近くの道場への出稽古がおすすめです。出稽古の際にも、礼儀作法には気をつけてください。

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