「小学生の子どもが剣道に興味を持っているけど、運動が苦手だから向いていないかもしれない」
そんな不安を感じている保護者の方も多いのではないでしょうか。じつは、剣道に取り組んでいる子どもたちは運動が得意な子ばかりではありません。「運動は苦手だけど剣道は楽しい」と言って取り組んでいる子どももたくさんいます。
そこで、本記事では剣道に向いてる子と向いてない子について、詳しく解説しました。また、剣道をスポーツとして捉えた場合、体型や年齢による向き、不向きについても解説しています。
剣道は球技などとは異なり、比較的運動の苦手な子が多く取り組んでいる競技です。もし、お子さんが剣道に興味を持たれたなら、ぜひ、道場の見学に行ってみてください。
この記事を書いた人
・剣道歴39年
・剣道 錬士七段
一般企業の会社員をしながら、地元中学校の剣道部外部指導員・少年団の指導者として日々活動中。自身の稽古にも継続して取り組んでいる。
剣道の疑問を小中学生や初心者の人にもわかりやすく伝えようとメルマガ、note、ブログにて発信。
2021年に著書「28回も不合格でしたが、なにか?」を執筆し、Amazonにて発売中。
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剣道に向いてる子の3つの特徴
剣道に向いてる子の主な特徴は以下の3つです。
- 素直な心を持っている
- 物事に前向き
- 健康である
ただし、剣道を始めた当初は上記に該当しなくても、上達している子はいます。「男子、三日会わざれば刮目して見よ」という慣用句があるように、男女関係なく子どもの成長は早いので、続けるうちに変化する部分も多く、向いてるか向いてないかは一概に決めつけられません。したがって、参考程度にとどめておいてください。
それでは、上記の3つについて、もう少し詳しく解説します。
剣道に必要な「素直な心」を持っているかどうか
剣道における「上達の秘訣は何か」と問われれば、多くの先生方が声を揃えて「素直な心」と答えます。つまり、剣道に向いてる子は、素直な心の持ち主です。
剣道に取り組んでいると、色々な方からアドバイスや指導を受けることになります。しかし、すべてのアドバイスを理解して受け入れることは、容易なことではありません。しかも、いただいたアドバイスの中には、間違っていると思えるようなアドバイスもあります。
じつは、それらのアドバイスのほとんどは、間違ったアドバイスではありません。受け取る側の理解が追い付かないことで、間違っているように思えるだけです。問題は、自分が理解できない内容のアドバイスを素直に受け取れるかどうかというところ。実際、素直な心でアドバイスを受け入れ、努力と経験を積み重ねることによって理解できる内容もあります。
したがって、今は理解できないアドバイスや指導を受け取れる「素直な心」を持っていることが重要です。また、剣道を続けるうちに気がつき、素直になる子もいます。
物事に前向きに取り組む子は剣道に向いている
剣道は強くなっても、試合で勝ち続けることが困難な競技です。ある大会で優勝した子でも、次回の大会で優勝できるとは限りません。一瞬の隙が勝敗を決める場面があるからです。よって、試合に負けたからといってやめてしまうのではなく、向上心をもって取り組める子が剣道に向いています。
剣道には「打って反省、打たれて感謝」という有名な言葉があるとおり、打たれて成長する武道です。打たれれば、誰もがいやになります。しかし、打たれたところは自分の弱点であり、そこから何を学ぶのかが重要です。打たれた経験や試合で負けた経験を前向きに捉えて取り組む子こそ、剣道に向いています。
健康でなければ剣道を続けられない
剣道は体を動かす必要があるため、健康でなければ続けられません。したがって、健康であれば誰でも剣道に向いてる子の可能性があります。
剣道は客観的に見るよりも激しい動きが必要です。年配の方々は体よりも精神面の鍛錬が必要となりますが、精神面の鍛錬に至る前には体で覚えなければなりません。
ただし、ここで取り上げる健康とは、主に心肺機能や消化器官系の健康を指します。剣道に取り組んでいる人の中には、隻腕の人や足の不自由な人、ろうあ者も多く、バリアフリーの活動も盛んです。
剣道では、懸り稽古や打ち込み、追い込みなどの心肺機能に負担をかける激しい稽古がありますが、稽古についていける体力があれば問題ありません。また、習い始めには体力が無い場合でも、稽古を続けるうちに体力がつき、稽古についていけるようになります。
剣道に向いてない子の4つの特徴
一方、剣道に向いてない子は、以下の4つに該当する場合です。
- 教えを素直に聞かない
- 極端に消極的
- 運動のできる体力がない
- 体を動かすことが嫌い
それぞれ詳しく解説します。
教えを素直に聞かない子は剣道に向かない
自分の理解できない指導を受けても素直に受け取れない子は剣道に向いていないでしょう。剣道を続けていると、納得できないアドバイスも多いのですが、長く続けているとすべてつながっていると理解できます。
一方、素直にアドバイスを聞かず、自分勝手な解釈で稽古を続けていては上達は見込めません。素直に聞かない子は、剣道に向かないだけでなく、勉強や生活においてもうまくいかないことが多いでしょう。
極端に消極的な子は剣道に向かない
剣道は相手を打たせてもらって上達します。人を棒で叩く行為自体に抵抗を感じたり、積極的に打っていけない子は剣道に向いていません。
剣道では多くの道具を使用しますが、誰よりも早く準備をすることが重要です。早く準備ができれば稽古時間も長く取れ、充実した稽古ができます。早く準備を済ませるには、積極的に取り組まなければなりません。中には稽古を少しでもサボろうと考える子もいますが、消極的な取り組みでは上達も期待できず、辞めてしまう可能性が高いでしょう。
また、剣道では充実した気勢が重要ですが、消極的な子は大きな声を出せません。すべてが後ろ向きな取り組みとなってしまうため、剣道には向いてないといえるでしょう。
運動のできる体力がない
体力が無く運動ができない子も、剣道には向いていません。剣道は比較的激しい動きが多いため、十分な体力が必要です。また、体力とともに気力も必要となりますが、体力がなければ気力も続かないケースがあります。
ただし、生涯剣道といわれるように、80歳、90歳になっても若者と一緒に稽古が可能です。中には100歳を超えても道場に立ち、子どもたちと稽古を続けている先生もいらっしゃいます。
剣道を続けるには健康が大事です。こちらは101歳の太田範士。太田範士は2021年6月に他界されました。
体を動かすことが嫌い
剣道をしている子たちは運動が苦手な子が多いのですが、運動が嫌いな子たちではありません。「苦手」と「嫌い」の間には月と地球ほどの隔たりがあります。運動が苦手な子でも剣道はできますが、体を動かすこと自体が嫌いな子には向いていないでしょう。
剣道はスポーツの要素も持つ競技のため、体を動かすことが嫌いな子は稽古を続けられません。
剣道に向いてる体型
「うちの子は体が小さいから、剣道はできそうにありません」
そんな風に考える保護者の方もいらっしゃいますが、剣道に体型や体格差による優劣はありません。柔道や空手などの直接相手と接触する武道やスポーツの場合、体格差が大きく影響するでしょう。しかし、剣道は竹刀を使用するため、小さなお子さんが大きなお子さんに試合で勝つことも十分可能です。
たとえば身長差がある場合、背の高い人は背の低い人に面が打ちやすく、逆はなかなか面を打てません。一方で、背の低い人は背の高い人に小手や胴が打ちやすい状況です。
また、体重差についても大きな問題はありません。小さなお子さんが大きなお子さんに体当たりされ、倒れたり場外に出たりする場面をよく見ますが、体当たりは足さばきや体さばきを身につけることで解決できます。
したがって、剣道に取り組むうえで、体型や体格の差は大きな問題ではありません。
剣道を始めるのに向いてる年齢
剣道は何歳からでも始められます。中学校や高校の部活動で始めたり、大人になってからお子さんが習い始めるタイミングで剣道を始める人も多いでしょう。中には、60歳を過ぎてから始める人もいらっしゃいます。
剣道を始めるのにもっとも向いている年齢は、小学校に入学する6歳から7歳頃です。小学生になると、ある程度の言葉の理解もでき、体力もつきます。未就学児でも剣道を習うことは可能ですが、多くの場合は保護者同伴という形態が多いでしょう。
また、理解度の深まる中学や高校の部活動で剣道を始めるのもおすすめです。筆者も中学校の部活動で剣道を始めました。同様に、中学や高校の部活動をきっかけにして剣道を始める人も多くいます。
剣道は何歳からでも始められますが、小学校入学や中学、高校への入学をきっかけにして始めるのがおすすめです。
剣道に向いてる子に関するQ&A
剣道に向いてる子、向いてない子について、よくある質問をまとめました。
Q:剣道は何が身につきますか?
剣道で身につくのは、体力や精神力、忍耐力とともに礼儀作法です。剣道は試合での勝敗を競うだけではなく、昇級審査や昇段審査があり、誰もが目標を持って継続できます。昇級審査や昇段審査では、正しい所作や基本に忠実な打突が求められます。
Q:剣道を習わせるメリットは何ですか?
剣道では集中力が養われます。また、試合や稽古は動きが激しいため、一瞬の隙を見つけなければなりません。したがって、咄嗟の判断力が身につき、体力も向上します。
剣道は剣道着や袴、胴、垂れ、面など、多くの紐を結ばなければなりません。紐を結ぶ際には指先を使用するため、器用になり脳も刺激されます。
Q:剣道にどのような能力が必要ですか?
剣道の稽古では精神力や忍耐力が必要です。また、瞬発力や持久力、柔軟性などの体力的な要素も必要になります。ただし、それらは最初から備わっているものでなく、稽古に取り組むことで身につくものです。
剣道は素直な心で取り組める子に向いている(まとめ)
本記事では剣道に向いてる子と向いてない子について解説しました。剣道は運動神経や筋力、体格などに左右されにくい競技なので、誰でも取り組めます。ただし、向上心を持って根気よく続けなければ成長は望めないでしょう。それは剣道だけでなく、ほかの競技や勉強でも同様です。
しかし、習い始めるときに向上心や体力に不安があったとしても、無理せず取り組むことで必ず向上します。不安なこともあるかもしれませんが、百聞は一見に如かず。ぜひ、一度近くの道場を見学してみてください。
剣道は「剣道の理念」に示されているとおり、人間形成が目的です。剣道を通じたお子さんの成長を楽しみにしています。