少林寺拳法に興味がある人は、どんな技があるのか気になるでしょう。少林寺拳法には600種類以上の多種多様な技があります。
相手の攻撃をかわす技、相手に反撃する技など様々です。少林寺拳法の修行では、相手の攻撃に合わせて臨機応変に対応するための技を、レベルアップしながら少しずつ学んでいきます。
このコラムでは、少林寺拳法有段者の筆者が、少林寺拳法の技の基本について解説します。
ぜひ、少林寺拳法の凄さと妙技を知って、始めるきっかけにしてください。
この記事を書いた人
少林寺拳法弐段の有段者。
武道の疑問を解決する記事を書くので、ぜひ参考にしてください。
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少林寺拳法の技について
少林寺拳法の創始者である宗道臣(そうどうしん)先生が、中国武術や少林拳を体系づけてまとめた武術が少林寺拳法です。
少林寺拳法の技を大きく分けると、「剛法(ごうほう)」「柔法(じゅうほう)」「整法(せいほう)」の3つになります。
このうち、武術としては「剛法」「柔法」が主であり、「整法」は身体を整えるための健康法という位置づけです。
少林寺拳法はこの三法を基本として、26系統、600種類以上の技があるとされています。
これら全部を修得するには一生かかるかもしれません。以下に、少林寺拳法の基本と応用について解説します。
少林寺拳法の基本
少林寺拳法の基本は、以下の2点です。
・心を乱さないように、常に呼吸を整えること
・相手の攻撃に対して瞬時に対応するため、周りをよく観察する習慣を身に付けること
誰でも恐怖やストレスを感じると心や息が乱れ、疲れてしまうでしょう。
そして、相手の動きを観察するために目配りをしていないと、致命的な攻撃を受ける恐れがあります。
現代社会では、犯罪に巻き込まれない限り、このような危険はないですが、身を守る護身術である少林寺拳法では目配りについても修行します。
これにより、相手の攻撃をかわしたあと、すぐさま反撃できるようになるのです。
調息(ちょうそく)
息を整える修行を調息といいます。
鼻から静かに深く長く息を吸い(吸息)、胸腹部に息を充満させ(保気)、静かに鼻から息を吐く(吐息)、息を3割ほど残して止める(残気)を繰り返し行う修行です。
技の練習をしながら、リズミカルに調息できるように、息の吸い方や吐き方に長短をつけて修練します。
八方目(はっぽうもく)
相手の動きに目配せを行うことを八方目といいます。少林寺拳法では、目を動かさず、近くの四方八方を見るようにします。
これは、相手の攻撃ばかり見ていると、スキを突かれ、全く別の方向から二次攻撃を受ける恐れがあるからです。
防御と反撃(剛法)
少林寺拳法の教えでは、守主攻従(しゅしゅこうじゅう)が大原則です。自分から攻撃するのではなく、相手の攻撃をまず受けて(かわして)から、反撃を行うというものです。
剛法では、相手の動きを読んで攻撃をかわすことで後手必勝の反撃が可能となります。調息と八方目を使うことが重要です。
目打ちと反撃(柔法)
相手が腕や襟などを掴んで来たとき、そのまま相手の思うようにされるとやられてしまいます。
そこで、柔法では、目打ちで相手をひるませたあと、直ちに相手の手や腕の関節を極めて反撃するのです。
なお、少林寺拳法の目打ちは空手の目突きとは違い、相手をひるませるために使う技で、指をしならせて目の付近を打ちます。
失明の大ダメージを与えるものではありません。
少林寺拳法の身体の使い方
少林寺拳法では、無駄がなく最短距離で相手に近づき反撃するため、いくつかの身体の使い方を修行します。
具体的には足運び(運歩法)や体さばきなどです。
また、相手の構えに対して、守りや反撃がしやすいように構えることも修行します。こちらは、足構えや体構えとなります。
足構え(立ち方)と足運び
立ち方には、「閉足立ち」「開足立ち」「レの字立ち」など様々あります。かかとをつけて立つのが閉足立ち、かかとを開くのが開足立ちです。
レの字立ちは、前足のつま先を前に一歩踏み出し、後ろ足のつま先を外に向けてななめ横に立ちます。
代表的な足運びには、足を交差させない「差し込み足」や足を交差させる「差し替え足」などがあります。
体構えと体さばき
少林寺拳法の基本的な構えは、手を重ねて身体の前に下す「結手(けっしゅ)構え」、最もポピュラーな「中段構え」です。
どちらも、リラックスして相手の出方をうかがうことができます。
相手の動きや構えを見ながら、臨機応変に体構えを変更しましょう。足運びで間合いを詰めたり、離したりすることで、防御と反撃の足がかりを見出すのです。
少林寺拳法の応用
少林寺拳法には、整法という技があります。身体の働きを正常に戻す(整える)ための技ですが、経絡秘孔などの絡みもあり、難しいため、別の機会に説明します。
少林寺拳法の応用として紹介するのは、介護への応用です。
少林寺拳法の技の1つである「鈎手(かぎて)※」を応用した「鈎手の理(り)」を使えば、介護の現場で楽に人を起こすことできます。
※鈎手とは、相手が手首を掴んできた際、ひじを直角に曲げながら体に近づけることで、相手の掴む力を無力化する技
「鈎手の理(り)」の応用により、少ない力で人を動かすことができるため、介護や看護において非常に有益です。
なお、ベースボール・マガジン社から「少林寺拳法で介護ができる」という本が出ているので、興味がある人はぜひ一読ください。
少林寺拳法についてもっと知りたい方は、「少林寺拳法とは?あなたの疑問に有段者の元拳士が分かりやすく解説します!」をご覧ください。
少林寺拳法の技は大きく分けて2種類ある
少林寺拳法の武術としての技は大きく分けて、以下の「剛法」「柔法」の2つがあります。
・剛法は「受け」「突き」「蹴り」などの攻撃的な技
・柔法は「関節技」「投げ」などのかためる技(極める技)
ただし、剛法と柔法がそれぞれ別々に用いられるのではなく、剛法と柔法を組み合わせて、相手の動きに対して臨機応変に立ち回るのが少林寺拳法の特徴です。
少林寺拳法の技【剛法】
剛法では、相手の攻撃をかわしたあと、必殺の一撃で反撃します。流れを解説します。
受け技での防御
相手の突きや蹴りなどに対して、適切な体構えと足運びをしながら、受けや体さばきで対応するのが少林寺拳法の流儀です。
例えば、顔を狙った突きに対して千鳥足で足を斜め前に踏み出して身体を横に向けて攻撃をかわしながら、手で顔の横を払う「内受け」で拳を弾きます。
また、腹を狙った蹴りについては身体を少し引きながら横にしつつ、手刀で受けます。
突きによる反撃
腹を狙った蹴りを「下受け」で受けたのち、そのまま中段逆突きで相手の水月(すいげつ、みぞおちのこと)(おなかにある急所)を強く突きます。
これが、いわゆる「当て身」という攻撃で、経絡秘孔にある急所を強く正確に攻撃する一撃必殺の反撃です。
蹴りによる反撃
上段突きを「内受け」で受けたのち、逆蹴りで相手の水月を強く蹴ります。非常に効果がある反撃で、きちんと入れば、相手は悶絶するでしょう。
鍛錬すればきちんと正しい位置に反撃できますが、胴を着けて練習する必要があります。
少林寺拳法の技【柔法】
柔法では、相手の攻撃を利用して相手の関節などをかため、動けないようにします。
投げ技もありますが関節を極める技の方が多く、かけられると非常に痛いです。
目打ちからの反撃
例えば、相手が腕を掴んできた場合、そのまま腕を掴まれて引っぱられてしまうと相手の思うツボです。
そこで、腕をつかまれた瞬間に、手のスナップを利かせて相手の目を素早く打つ「目打ち」を行い、相手をひるませます。
相手がひるんで体勢が崩れたところで、腕を相手の腕の上を回して相手の手首をS字にして極めます。
相手は下へ逃げるため体勢が崩れ、そのまま極め続ければ戦意喪失させることができるでしょう。
この技は「袖巻(そでまき)」という極め技で、かけられるとかなり痛みを伴います。
少林寺拳法の技は臨機応変
少林寺拳法は相手の攻撃や動きに合わせて柔軟に反応しながら、相手を倒す護身術です。
相手を激しく攻撃することで大ダメージを与えるのではなく、確実に「蜂の一刺し」で反撃して動きを封じることを目的としています。
人を殺す、あるいは再起不能にするのは「殺人拳」ですが、少林寺拳法の技は、相手の反省を促し、役に立つ人間に更生させるために使う「活人拳」なのです。
また、剛法と柔法をうまく調和させ流れるような剛柔一体の技が少林寺拳法の技の真髄といえるでしょう。
少林寺拳法は技を磨くだけの武道ではなく、道徳も学ぶ宗門の行です。厳しいけれど、楽しくもあり、自分を見つめ直せます。
なお、女性の護身術としてもおすすめです。
女性におすすめする理由は、「女性におすすめの護身術は少林寺拳法!元全日本チャンピオンが3つの理由を徹底解説」をご覧ください。
興味を持たれた方は、ぜひ近くの道場を「武道・道場ナビ」で探してみてください。