剣道に取り組む人が試合に勝ちたいと考えることは不思議ではありません。
とくに小中学生や高校生など若年の人にとって、試合は実力を試すチャンスです。
なかには、少しくらいずるい技を使ってでも勝ちたいと考える人もいます。
そこで本記事では、剣道のずるい技とはどのような技を指すのか、本当にずるい技を使えば勝てるのかなどについて考えてみましょう。
ただし、本記事では、剣道のずるい技を推奨するものではありません。
剣道は試合に勝つことが目的ではなく、正々堂々と立ち合い、心を磨くものです。
したがって、本記事を読み、あなたの取り組み方を考える機会にしてみてください。
剣道における「ずるい技」とは何か
剣道における「ずるい技」とは、全日本剣道連盟が定める試合審判規則の禁止行為に触れないが好意的に思われない技を指すと思われます。
なかには、禁止行為をしても審判に見つからなければよいと考える人もいるかもしれませんが、禁止行為はおすすめできません。したがって、試合審判規則の禁止行為に触れないことが重要です。
本記事では、とくに「ずるい技」と考えられる次の2種類の技を紹介します。
- つば迫り合いからの崩し方
- フェイントからの技
それぞれ詳しく解説しましょう。
つば迫り合いのずるい技
つば迫り合いから引き技を打つ際には、相手を崩さなければ打突ができません。剣道のつば迫り合いでは、相手を崩すさまざまな方法がありますが、なかには少しずるい技もあります。
自分の竹刀が自分から見て右側、相手の竹刀が左側にあり、鍔と鍔で押し合う形が正しい鍔迫り合いです。正しいつばぜり合いで相手を崩すには、タイミングを見計らって押したり引いたりしなければなりません。
また、新型コロナが蔓延したあとからはつば迫り合いやつば迫り合いの解消方法に関する規定が厳しくなり、崩す方法も難しくなりました。そのような状況下でも、強豪選手は上手く相手を崩して打突しています。
とくに多い方法が、一瞬だけ肩や首に竹刀を掛けて押す技です。鍔迫り合いで肩に竹刀をかける行為は、不当なつばぜり合いとして禁止されているため、肩や首に竹刀を掛けて押すのは「ずるい技」といえるでしょう。
つば迫り合いで相手を崩す方法としては、ほかにも一瞬だけ下がって押す方法があります。引く瞬間に相手が離れず前に出ようとする場合に有効ですが、近年は鍔迫り合いは早い段階で解消することが求められるために利用できる機会は少なくなっています。
つば迫り合いは双方が解消することになっているため、反則を取られる可能性もあり注意が必要です。
剣道におけるフェイントはずるい技なのか
先日、筆者は横浜武道館で開催された「第40回全国道場対抗剣道大会」に出場しましたが、「ずるい技」であっという間に負けてしまいました。その様子を動画でお伝えします。
相手の選手から面を打つ気配を感じ取った筆者は面をすり上げようと試みたのですが、すぐさま小手に転じます。「ずるい技」というより上手いと感心させられる技です。実際は動画を見るまで何が起こったのかわかりませんでした。
これは一般的に「フェイント」や「見せ技」などと呼ばれ、相手を騙す技です。フェイントは試合の流れによってまったく意味がなく、逆に隙を作ることにもなるハイリスク・ハイリターンの技とも言えるでしょう。
また、技術レベルが上がってくると対応策がわかるために効果が薄れます。その辺りを理解して利用してみてください。
具体的なフェイント技の例
フェイントは、打つと見せかけて打たず、相手に避けさせて隙を作る技です。精神面が優位なときに使用することで、相手は驚いて避けようとします。一方で精神的に優位でない場合には、自ら隙を作ることになるため、打たれる可能性が高くなるでしょう。
フェイントの例としては、以下のようなものがあります。
- 面を打つと見せかける→小手を打つ
- 面を打つと見せかける→小手を打つと見せかける→面を打つ
- 小手打つと見せかける→面打つと見せかける→小手を打つ
- 担ぎ技(つば迫り合いからの担ぎ技も含む)
担ぎ技は、竹刀を左肩に担ぐことで小手を打つと思わせる技です。
剣道のずるい技は道具から
剣道では、技だけでなく「ずるい道具」を使用する人もいます。「ずるい道具」として、主に考えられるのは次の2点です。
- 剣道具(防具)
- 竹刀
剣道具を軽く動きやすくすることで試合に勝てると考える人がいます。また、剣道具だけでなく竹刀にも軽さや操作性を求める傾向が強い状況です。ただし、ずるい道具は規定されて使えなくなってきているので注意しなければなりません。
それぞれについて詳しく解説します。
ずるい剣道具
近年、剣道具が軽量化されています。
技術の革新により素材自体が軽くなっているのは当然のことながら、小手筒や面垂れが以前より短くなっているのは誰が見ても明らかです。また、垂れや胴も軽いものが好まれる傾向にあります。
これは試合偏重の傾向が強く、とにかく動きやすい剣道具を求める顧客ニーズに応えた結果です。現在は、軽く動きやすい剣道具が開発されて、市場の多くを占めています。
なかには垂れをくり抜く猛者もいますが、剣道具は本来身体を守るものであり、軽量化は本末転倒です。ずるい剣道具を使ったところで、試合で勝てるとは思えません。道具に頼る前に、技術を磨く努力をするべきでしょう。
現在は試合審判規則が改訂され、面垂れの長さや小手筒について記載されています。ずるい剣道具にも限度があるので注意してください。
ずるい竹刀
剣道具と同様、竹刀にも「ずるい竹刀」があります。竹刀は年齢や性別によって規定がありますが、多くの剣道愛好家は少しでも軽い竹刀、操作しやすい竹刀を求めるのではないでしょうか。
一般的に操作しやすいとされている竹刀は重量バランスが重要です。多くの人が振りやすいと感じる竹刀は、剣先が軽く手元が重くなっています。
少し前の話になりますが、上記を満たす「スーパーバランス竹刀」と呼ばれる竹刀が世間を賑わせました。しかし、スーパーバランス竹刀には大きな欠点があります。
それは、破損する確率が高いというもの。実際、剣先の竹が細く強度が弱いため、試合中に破損することがありました。試合中の竹刀破損は大きな事故につながりやすくなります。
2019年に試合審判規則が改訂され、剣先部分の太さが細かく規定されました。したがって、規則に抵触しない範囲で、よりよい重量バランスの竹刀を見つける必要があります。
ただし、「ずるい竹刀」を使用することで、絶対に勝てるわけではないので注意してください。
剣道では合法の「あと出し」はずるい技なのか?
じゃんけんでは確実に勝つ方法があります。それは「あと出し」です。つまり、相手の出す手を見てから、勝てる手を出すというもの。ずるい技としか言いようがありません。
一方、剣道の場合はどうでしょうか。
剣道における「あと出し」は、ルール上まったく問題がありません。つまり、「剣道で絶対勝てる技を知りたい」と考える人にとっては最適解と言えます。
剣道では必ず勝つ技というものは存在しません。一方で、勝率を良くすることは可能です。剣道の勝率をよくするには、あと出し(後の先)のずるい技をおすすめします。
剣道におけるあと出しとはどのような技でしょうか。
相手を引き出して打つ「あと出し」はずるい技ではない
剣道はスピード競技ではないため、先に打った選手が必ず勝つわけではありません。とくに技術レベルが上がってくると、攻めが効いていない状態で先に打てば返される可能性が高くなります。つまり、あと出しの方が圧倒的に有利な状況です。
したがって、高段の昇段審査ではいかに相手に先に手を出させるかが問われます。ただし、あと出しだからといって、技を出すタイミングが遅すぎてもよくありません。ほんの一瞬だけ相手の出す技を見る程度の「あと出し」であることが重要です。
あと出し技の例としては「面すり上げ面」「小手すり上げ面」「面返し胴」などがあります。これらの技は応じ技と分類されるもので、決してずるい技ではありません。
あと出しのずるい技にも「先の気位」が必要
前述したように、剣道における「あと出し」は決してずるい技ではありません。一方で、相手の打突を待ってばかりだと「ずるい技」と認識される可能性があります。指導者によっては「待ち剣」と揶揄され、自分から積極的に攻めるように指導されるでしょう。
重要なのは、ただ待っているばかりではずるい技と認識されるだけでなく、技の成功確率も低くなる点です。あと出しの技は「後の先」の技と言われ、待っているだけでなく「先の気位」が必要とされます。
つまり、いつでも打てる状態で相手を圧倒し、相手に打たせなければなりません。自分から攻めを見せ、相手を誘い出した技は評価も高いのでおすすめです。
剣道のずるい技に関するQ&A
剣道のずるい技に関する質問を取り上げましょう。
Q:引き面ばっかで決めるのはずるい?
引き面はずるい技ではありません。
たしかに、高段の昇段審査においては引き技は評価が低いと言われますが、実際は機会であれば打ってもよいでしょう。ただし、「審査で引き技は打つな」と名言する先生も多いのが事実です。
Q:剣道で反則ギリギリのずるい技を教えてください
相手の竹刀を無理矢理落としたり、体当たりで場外に押し出したりすると、相手側の反則で勝てるかもしれません。一方で場合によっては反則となる可能性もあるため、おすすめできません。
剣術ではなく剣道に取り組むなら基礎・基本をしっかり稽古し、正々堂々とした剣道をするべきです。最後には、ずるい技を使わずに正々堂々と取り組む人が勝ち残ります。
まとめ~剣道のずるい技は自分から攻める気迫が重要~
本記事では、剣道のずるい技について紹介しました。具体的には、つば迫り合いやフェイント、あと出しの技と道具の軽量化などです。
現在は試合偏重の動きが強まっており、なんとしでも勝ちたい人は、禁止行為に近いような「ずるい技」を使ってくるかもしれません。一方で、全日本剣道連盟は試合審判規則を改訂し、「ずるい技」が使えないように対策を行っています。
剣道では、自分から攻める気迫がもっとも重要です。ずるい技に頼らず、正々堂々と試合に臨んでください。今以上に稽古に取り組む際には、近くの剣道道場を探して出稽古に行くのがおすすめです。