空手の構えは組手でも型でも競技で戦う上で、非常に重要なポイントです。
突きや蹴りを無駄なモーションなく繰り出すためには、安定した構えは欠かせません。
また相手の攻撃を捌いたり、身を守るための防御にも構えは大きく関係しています。
空手の基本の中心は構えの中にあると言っても過言ではないでしょう。
この記事ではそんな空手の構えについて、全国大会にも出場経験のある筆者が詳しく解説していきます。
この記事を書いた人
空手道・糸東流糸洲会有段者、好きな型はバッサイダイです。
現在はボクシングに取り組んでおり、自分の経験を踏まえた武道や格闘技に関する情報を発信。
その他にも英語学習や美術に関する記事も制作しています。
空手の構えの重要性
空手において構えは競技で勝ち進んでいくために非常に重要な要素です。
型においては上半身の動きを安定させたり、蹴りの動作をスムーズに行うために安定した立ち方は欠かせません。
組手においては立ち方によってステップワークの精度に大きな差がでてきます。
ステップワークは攻防の要であり、構えがおろそかになってしまうと相手の攻撃から身を守ることも、逆に相手に攻撃することもできなくなってしまうのです。
空手では型と組手における構えの形が大きく異なります。
その理由として型は本来の一撃必殺の理念から、身体の中心から重い一撃を相手に与えるための構えが採用されています。
特に競技における組手では一撃必殺よりも、ポイントを取っていくことに重要性があるので構えにも大きな違いがあるというのが理由です。
しかし、組手をメインにやるからといって、型の構えをおろそかにしては本末転倒。
型の構えには重心を移動する方向に一緒に移動し、身体がぶれないように攻防をするための基本的な動作がふんだんに盛り込まれています。
空手の型の構え一覧
それではまずが型の構えから確認していきましょう。
型には以下のような立ち方があり、構えの基本となっています。
- 上下の構え・天地の構え
- 前羽の構え
- サンチン立ち
- 猫足立ち
- 平行立ち
- 四股立ち
型の基本的な立ち方は沖縄空手と伝統派空手の間で違いがあります。
沖縄空手はサンチン立ちに代表されるような、自然な状態を意識した立ち方が多いのが特徴です。
伝統派ではより重心を落として、安定感のある立ち方が重視されます。
型の構えの重要なポイント
試合で型の演舞を行う場合に審査基準となるのは「型の美しさ」「技の意味を理解した動きができているか」「無駄な動きが無いか」といったポイントです。
美しい型を演武するためには低い重心を保った状態から、身体がぶれないように突きや蹴りを繰り出すことがとても重要。
重心が浮いてしまうと蹴りや突きのさいに身体が浮いてしまい、無駄な動作が多くなってしまいます。
例えば四股立ちや猫足立ちは体勢を維持するのも難しい立ち方ですが、姿勢を崩さずに型の動作をできるように意識してみましょう。
空手の組手の構え
組手の構えは型よりも自由度が高く、選手や相手との相性によって臨機応変に対応させていく必要があります。
ですが完全に自由なわけではなく基本的な構え方があり、それを応用し発展させていきます。
基本がしっかり身についていないと、途中で大きな問題につながるので、まずは基本をマスターしましょう。
基本的な組手の構え
以下の順番に従って構えてみると、基本的な構えを作ることができます。
- 肩幅より少し広く足をひらく
- 利き足を一歩分後ろへひく(引き足のつま先は斜め45度)
- 膝をかるく曲げて重心を下げる
- 拳を肩よりも少し下の位置にあげる
これが基本的な組手の構えの方法です。
構えを作るときに意識しておきたいのは、身体の中心に重心をおくことができているかという点です。
身体の中心に重心があれば、前後への移動や攻撃や蹴りを安定した状態で行うことが可能となります。
組手では相手のスタンスやスタイルによって、上体を前に倒す「ゼンシン構え」や後ろに引く「コウサ構え」などを使うことも。
しかし、どのスタイルでも重心は身体の中心に置いておくことが重要になるので、まずはこの基本的な構えのまま動けるよう練習をしましょう。
組手の構えNG例
ここからは、組手の構えでやってしまいがちな悪い例を5つ紹介していきます。
細かいポイントですがこれらの点を改善するだけで、一気に上達する重要なポイントです。
前足のつま先が横向きなっている
引き足は斜め45度の方向に向けますが、前足は必ず正面方向に向けておきましょう。
前足が横向きになってしまうとステップがしづらく、身体を移動させるのに時間がかかってしまいます。
また前足を軸とした蹴り技がだせなくなってしまう、というデメリットもあるので注意しましょう。
ガードをする手の位置が低すぎる
試合中ガードの手を肩の位置にあげた状態をキープして置くのは意外と大変です。
想像以上に肩回りの筋肉が疲れてしまうため、知らず識らずのうちにガードが下がってしまうというケースも少なくありません。
ガードが下がってしまうと防御だけでなく、突きのスピードも遅くなってしまいます。
懐が浅くなりすぎない
ガードをあげることを意識しすぎるあまり、ガードの手を身体にくっつけすぎてしまう方がいます。
組手ではボクシングのようにブロッキングすることはあまりないので、相手の攻撃を払いやすいように手と身体の間にゆとりを持つのが理想的です。
そうすることで相手にフェイントをかけやすくなるなどディフェンスだけでなく、攻撃面でのメリットも多くなります。
身体が正面を向きすぎている
後ろ手や足での攻撃を意識すると、距離を縮めるために身体を正面に向けてしまいがちです。
身体は斜め45度を意識して、相手から自分が斜めに見える位置を維持しましょう。
斜めに向けることで相手から見える身体の面積も少なくなり、相手が攻めにくくなります。
足幅が極端に狭い
足幅が狭いと相手から圧力をかけられたさいに、簡単に押されてしまい反撃ができなくなってしまいます。
またステップワークもしづらくなるため、動作が遅くなる原因にもなります。
足は必ず肩幅より開いて、前後左右どちらに移動しても身体の真がぶれないような体勢を維持しましょう。
フルコンタクト空手と伝統派空手では組手の構えにも違いがある
出典:極真会館 富田林道場
組手の構えを考えるさいにフルコンタクト空手なのか、それとも伝統派空手なのかによっても違いがあるので注意しましょう。
というのもフルコンタクトと伝統派では、組手競技のルールや採点方法が異なるため構えにも違いがでてきています。
例えばフルコンタクトでは遠い間合いから一気に踏み込んで攻撃するよりも、近い距離で相手に攻撃をすることが非常に多いです。
一方で伝統派では比較的遠い間合いから、ステップを駆使して一気に攻め込みます。
このような違いの他にも各選手の得意技などを活かした構えが採用されているケースもあります。
組手の構えに正解はありませんので、基礎をベースに自分にあったベストな構えを探してみてください。
空手において構えはとても重要
この記事では空手の構えについて解説してきました。
型においても、組手においても構えは非常に重要な要素です。
型は審査基準として重要な美しさを構成する重要なポイントなので、「重心の低さ」を意識して身体がぶれないように演舞しましょう。
組手の構えは比較的自由度が高いですが、ダメな構えとして共通するものはあります。
構えを応用するにもまずは基本的な形を身につけることが欠かせませんので、基本を習得してから自分にあったスタイルを見つけましょう。
組手に関しては色々な方の経験を踏まえて構え方を改善すると、比較的短期間でも大きな変化が生まれやすいです。
普段の道場だけでなく、出稽古などでさまざまな人に意見を聞いて見るのがおすすめです。