剣道の袴はわかりにくい!色やサイズ、素材の違いを錬士七段が詳しく解説

袴姿に憧れて剣道を始める人もいるようですが、袴の表記や形状には色々な謎があります。

「袴を購入するとき、毎回サイズがわかりづらくて困る」
「綿袴を買おうと思ったら、種類が多くてよくわからない」
「剣道の昇段審査はジャージ袴はダメなの?」

とくに剣道初心者にとっては疑問が多く、購入の際に迷うのではないでしょうか。

じつは、袴の形状やサイズ表記の意味を知れば袴選びに迷うことはありません。そこで本記事では、袴のサイズや色、素材の違いについて詳しく解説しました。ぜひ、剣道用の袴を購入するときの参考にしてください。

ぴったりの袴を使えば、それだけで強そうに見えるかもしれません。

この記事を書いた人

野川正人

・剣道歴39年
・剣道 錬士七段
一般企業の会社員をしながら、地元中学校の剣道部外部指導員・少年団の指導者として日々活動中。自身の稽古にも継続して取り組んでいる。
剣道の疑問を小中学生や初心者の人にもわかりやすく伝えようとメルマガ、note、ブログにて発信。
2021年に著書「28回も不合格でしたが、なにか?」を執筆し、Amazonにて発売中。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0BSBB8SJ2

剣道の袴は主に3種類の素材の商品がある

剣道の袴は、主に以下の3種類の素材のものがあります。

  1. ジャージ素材
  2. テトロン素材
  3. 綿素材

それぞれの特徴について詳しく解説します。

ジャージ素材の袴は軽くて人気

近年、ジャージ素材の剣道着とともに人気が高い袴が、ジャージ素材の袴です。ジャージ素材の価格相場は3,000円台〜7,000円となっており、リーズナブルで風通しがよく、夏用として重宝します。

また、素材が薄く化繊素材のため、洗濯してもすぐに乾くという点が特徴的です。袴自体の重量も軽く、洗濯しても生地の縮みもなく色落ちしません。一見すると綿袴に見える商品もあり、最近では少数ながらも剣道の六段、七段などの昇段審査でも着用している人もいます。

一方で、デメリットは素材自体が汗を吸わない点です。ジャージ素材の袴は汗を吸わないため、剣道具の破損につながります。とくに問題となるのは垂れ(垂れ紐)です。袴の代わりに垂れ紐が汗を吸着することになり、汗染みや紐、革の破損につながります。

そのため、最近は垂れの素材にも変化があるようです。

ジャージ素材はデメリットもありますが、重量の軽さと洗濯の手軽さから、高校生以下の利用者が増えています。

根強い人気のテトロン袴

古くからある化繊素材の剣道用袴といえば、テトロン袴です。テトロン袴はポリエステル系の合成繊維を素材としています。価格の相場は3,000〜5,000円とリーズナブルです。価格が安価なため、初心者や小中学生が多く利用しています。

近年はジャージ素材の袴の利用者が増えてきましたが、ジャージ素材が開発されるまでは剣道の稽古用として主流の袴でした。

ジャージ素材同様に、洗濯しても縮みや色落ちがない点が大きなメリットです。一方で、速乾性においては、ジャージ素材に劣ります。ただし、綿素材の袴よりは圧倒的に早く乾くため、今でも根強い人気です。

剣道の審査や試合には綿袴

剣道用の袴として、古くからあるのが綿袴です。綿袴はその名のとおり綿100%素材の袴で、綿素材のため吸汗性が高く肌にも優しいのが大きな特徴となっています。昇段審査、大会用の一張羅として使用する人も多く、未だに剣道六段以上の昇段審査には綿袴が常識だと言う人も多い状況です。

綿袴には藍染めと未晒のものがあり、藍染には抗菌作用があります。ただし、藍染の袴は色落ちするため、洗濯の際には注意が必要です。

綿袴の価格相場は8,000〜20,000円と化繊素材の袴よりも高くなります。価格の違いは、主に番手によるものです。中には5,000円程度で購入できる綿袴もありますが、安価な商品は生地が薄いので高級感が損なわれるため購入時に注意してください。

剣道袴の数字「番手」と「サイズ」の意味

剣道用の袴を購入する際に気になるのが数字表記です。綿袴には7,000番や10,000番などの「番手」があり、袴全般には16号や20号などの「サイズ」表記があります。

ここでは、袴特有の「番手」と「サイズ表記」について詳しく見ていきましょう。

剣道袴の「番手」は生地の目の細かさ

綿素材の剣道用袴には、主に5,000番〜10,000番の表記があります。これは「番手」と呼ばれるもので、生地に織り込まれている糸の密度を表すものです。

数字が大きいほど生地の密度が細かく厚くなり、数字が小さいほど生地の密度が粗くなります。試合や昇段審査には7,000番〜10,000番の袴がおすすめです。5,000番の袴は生地が薄く、お出かけ用としては不向きと考える人もいます。

ただし、同じ番手の袴であってもメーカーによって異なるため、一概に良し悪しを決められません。番手と価格には相関関係があります。したがって、10,000番なのに1万円以下で販売されている袴などについては多少の疑いを持つ必要があるでしょう。

剣道袴のサイズは尺貫法で示される

剣道用袴はサイズ表記が「24号」や「26号」などの「号」で表記されています。これは、「2尺4寸」や「2尺6寸」の尺貫法の意味です。ただし、家屋などを測定する尺貫法とは異なります。

尺貫法で長さを表す単位には、鯨尺(くじらじゃく)と曲尺(かねじゃく)があり、袴のサイズに使用されるのは、和装に用いる布類を測る際に用いられる鯨尺です。鯨尺と曲尺とは寸法が異なり、曲尺の1尺2寸が鯨尺の1尺となります。

つまり、鯨尺の1尺は37.88cm(約38cm)です。袴のサイズは、紐から裾までの長さを表します。つまり、紐の位置から足のくるぶしが隠れるところまでの長さを測定し、38で割った数です。たとえば、98.8cmだった場合は、38で割った数の「26」が袴のサイズとなります。

サイズがひとつ上がると3.8cm長くなることも覚えておくと良いでしょう。ただし、紐の位置は男性と女性で異なるので注意が必要です。

女子の袴はどうして1サイズ大きい?

身長が同じ男性と女性では、一般的に女性の袴のサイズの方が1つ大きなものになります。なぜなら、袴を履く位置が異なるためです。

女性はウエスト部分で袴の紐を結びますが、男性は腰部分で袴の紐を結びます。「ウエストの位置」は、腰の一番細い部分のことですが、「腰の位置」は腰の一番張った部分です。

したがって、腰よりもウエストの方が高い位置となり、ウエストで紐を結ぶ女性の袴の方が長くなります。その長さはおおむね1サイズ(3.8cm)と考えれば良いでしょう。

剣道の袴は着方が難しい?正しい着装で立ち姿も美しく

袴の着装が間違っていると、剣道の立ち姿もきれいに見えません。また、剣道の昇級審査や昇段審査においては、「着装」も重視されるため、袴の着方も重要です。

袴の着方については、言葉での説明よりも動画の方がわかりやすいため、下記のYouTube動画をご覧ください。

一般的に袴の裾は「前下がり」「後ろ上がり」と言われますが、直立した状態では、前下がりになっていなくても問題ありません。なぜなら、構えたときに、骨盤が前傾することで自然と前下がりになるからです。

近年、最初から後ろの短い袴も販売されていますが、正しい構えができていればそれほど気にすることではないでしょう。ただし、袴を踏んでしまうという理由で、前側を短くして履くのは間違いです。

剣道の袴の色と襞(ひだ)に込められた意味

剣道の袴に関して意外と知られていないのが、次の2点です。

  1. 袴はどうして藍色なのか
  2. 袴にはどうして多くの襞(ひだ)があるのか

それぞれについて詳しく解説します。

剣道の袴はどうして藍色なのか

藍染の様子

剣道具や剣道着、袴の主流は紺色です。これは藍を使って染められているからです。近年は化繊素材を使用し、藍染でない商品も増えました。しかし、現在も高級な剣道具や綿袴などには藍染が使用されています。

じつは、藍染は古くから日本人に親しまれてきました。海外では藍をジャパンブルーと呼んでいます。サッカー日本代表の「サムライブルー」も、藍染に由来するものです。

藍染は汗の酸化に強く、布地を丈夫にする作用があります。藍染はタデ科の植物である「藍」を原料とする伝統的な染色技法です。藍染によって加工された繊維は長持ちさせるために古くから使用され、武士には藍色が縁起の良い色とされてきました。

藍染には、抗菌作用や虫がつきにくい効果もあるとされています。何日間も稽古に使用した藍染の剣道着や袴が臭いのは当然ですが、化繊素材の臭いとは比較になりません。なぜなら、化繊素材の剣道着は藍染ではないため、抗菌作用がないからです。したがって、化繊素材の剣道着や袴は汗をかくとすぐに臭くなります。

剣道の袴にある5本の襞(ひだ)は五常五輪を示す

剣道の袴は複雑な形状です。前に5本の襞(ひだ)があり、後ろには1本の襞があります。この襞は、それぞれ下記のような意味が込められたものです。

  • 前の5本の襞:五倫五常の道を諭したもの
  • 後ろの1本の襞:二心のない誠の道を示したもの

五輪とは「君臣の義」「父子の親」「夫婦の別」「長幼の序」「盟友のの信」であり、五常とは「仁・義・礼・智・信」のことです。つまり、人間として常に守るべき5つの教えを表しています。

これは、竹刀の節に込められた意味と同じです。竹刀の節に関しては、「剣道の竹刀は種類が多い|サイズや値段・使い方の違いで選択」の記事をご覧ください。

後ろの一本の襞は、二心のない誠の道を示しています。誠の道とは、以下の2つです。

  1. 忠:主君に尽くすまごころのこと
  2. 孝:親、兄弟を大切にする心のこと

何となく使用している剣道の袴にも、先人の知恵と教訓が刻まれていることを知っておきましょう。

まとめ~袴の色や襞(ひだ)の意味を知れば剣道の深みが増す~

本記事では、剣道に使用する袴の素材の違い、番手、サイズ、色、襞の意味などについて詳しく解説しました。

袴は日本古来の着物であり、武士が戦のときに着たものです。したがって、日本古来のサイズ表記や染め方、教訓などが込められています。

日頃の稽古では何気なく使用しているかもしれませんが、袴の意味を知ることで剣道にも深みが増すことは間違いありません。昨今は武士道精神が失われつつありますが、袴を着用することで、今一度考え直してみてはいかがでしょうか。

剣道道場では剣道の技術的なことだけでなく、古くから伝わる教えにも触れられます。ぜひ、袴に興味を持ったら、近くの道場へ出稽古に行ってみてください。

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