【空手の流派一覧】それぞれの流派の特徴や目的にあった選び方を紹介

流派が統一されている柔道と異なり、流派の多い空手はどの流派の道場に通うかを選ぶのが難しいですよね。

流派の数が豊富な空手ですが、流派を統合する2つの種類があるのをご存知でしたでしょうか。この空手を大別する分類を知っておくと自分にあった流派選びもスムーズになるでしょう。

この記事ではこれから空手を習う方向けに、空手の種類や流派一覧、流派を選ぶポイントについて詳しく解説していきます。

この記事を書いた人

kazu

空手道・糸東流糸洲会有段者、好きな型はバッサイダイです。
現在はボクシングに取り組んでおり、自分の経験を踏まえた武道や格闘技に関する情報を発信。
その他にも英語学習や美術に関する記事も制作しています。

空手種類と特徴や選び方

空手は流派が多いことで有名ですが、大きく2つの系統に分類することができます。

それぞれ重視する練習内容が大きく異なるため、どちらが自分にあっているのか考えながらそれぞれの特徴を確認してみてください。

また流派を選ぶさいに参考にしたい特徴も確認していきましょう。

伝統派空手

空手はルーツである沖縄の武術「手(ティー)」や、中国武術の技術に基づいた打撃や蹴りを中心とした武術です。

伝統派空手には、発祥の地沖縄で継承され続けてきた沖縄空手と、沖縄空手が本州で柔術などの要素を吸収した本州空手があります。

沖縄空手と本州の空手では、型に大きな違いがあるのが特徴的です。

東京オリンピックの種目とされたのも、伝統派の中でも本州で発展した空手でした。

伝統派空手は相手と対峙して競い合う組手よりも型を重視しており、組手では相手に攻撃を当てない寸止めルールが採用されています。

型の美しさや礼儀作法、哲学を重視し、技術を磨く空手です。

フルコンタクト空手

フルコンタクト空手は伝統派空手の寸止めルールに異論を唱え、実際に相手に攻撃を与える直接攻撃を採用することで誕生しました。

そのため型よりも組手が重視され、伝統派とは異なりプロテクターなしで、顔面や急所以外の場所に直接攻撃を行うルールが採用されています。

また一部の流派では投げ技や掴み技も採用されており、総合格闘技の要素が強いのが特徴です。

組手の練習が重点的に行われるため、練習内容にはスパーリングなど実践を想定した練習が組み込まれています。

実践メインのフルコンタクト空手ですが、もちろん型もあり比較的ゆっくりで一撃の重さを重視する力強い型が多いです。

流派を選ぶときのポイント

これから空手を習おうと思っている方にとって流派選びはとても重要です。とは言ってもどのような基準をもとに流派を選べばいいのか悩みますよね。

ここでは先程紹介した種類に即して、流派を選ぶ時の基準となる点を紹介していきます。

沖縄空手

沖縄空手の流派は以下のような方におすすめです。

  • 空手の本流を学びたい
  • 大会などに出ずマイペースに習いたい
  • 関節技なども学びたい

沖縄空手は空手の発祥からその伝統を受け継いでいる流派です。伝統派空手の中でも特に型に力を入れています。

現在では全国大会も開催されるものの、本州の空手や極真空手と比べると大会の数は多くはありません。

スポーツとしての空手ではなく、武道として極めたい方におすすめです。

伝統派空手

本州の伝統派空手はこんな方におすすめです。

  • スポーツとして組手も取り組みたい
  • 大会や交流会にも参加したい
  • 礼儀作法や精神的な修養も重視したい

伝統派空手は競技人口が多く、大会や寒中稽古のようなイベントが非常に豊富です。

流派を超えて全日本空手連盟がさまざまなイベントを企画しており、大学の部活の空手部も伝統派が多くなっています。

また私が学んでいた糸東流では、練習の度に黙想の時間が設けられるなど、精神的な面のトレーニングも重視されていました。

フルコンタクト空手

フルコンタクト空手はこんな方におすすめです。

  • 格闘技として空手を習いたい
  • 簡単な投げ技なども学びたい
  • 型よりも実践をメインに学びたい

フルコンタクト空手の特徴はやはり相手にダメージを与える点にあります。型やスポーツ的な空手ではなく、本気で格闘技を学びたいという方におすすめです。

また簡単な投げ技なども学ぶことができ、将来的にプロの格闘家を目指しやすい環境に身を置くことができます。

伝統派空手の流派一覧

出典:全日本空手道連盟

数ある空手流派の中でも、最も競技人口が多いのが本州の伝統派空手です。

「松濤館流」「剛柔流」「糸東流」「和道流」の伝統派空手四大流派が形成する、全日本空手道場連盟の会員数は8.2万人にものぼります。

また世界空手連盟には150カ国以上の国が加盟しており、その会員数は4,000万人で、その他の武道競技を圧倒する会員数と言えるでしょう。

松濤館流

伝統派空手の中でも最も会員数が多いのが松濤館流です。松濤館流は近代空手の父とも形容される船越義珍氏によって創設されました。

その特徴は型のダイナミックさにあり、踏み込みの幅がとても広いのが印象的です。

このような特色は松濤館流空手の基本理念である、遠い間合いから一撃必殺という考えに由来しているものでしょう。

遠い間合いからの攻撃といっても、組み手を重視するわけではなく、むしろ型を重視して鍛え上げることで技の完成度を高めていきます。

一説では松濤館流の空手が韓国のテコンドーの源流とも言われているようです。

糸東流

沖縄空手の首里手と那覇手の2つの系統を学んだ2人の大家によって創始された糸東流。空手だけでなく、琉球古武術や棒術の技術も吸収して編み出された流派です。

糸東流はさまざまな武術の技術を複合的に構築しているため、技の数が多いのが大きな特徴となっています。

型の数も多く、型の技の中には投げや逆技も含まれていて観ていて非常に面白い型が多いです。

糸東流の型はスピーディーかつ、美しいことが重要視されます。

演舞の中では「四股立ち」や「猫足立ち」を重心を低く保ち、身体がぶれないよう演じる必要があり、体幹の強化や集中力がかなり必要になる型が多かったです。

ニーパイポーやセイエンチンといった糸東流で良く演じられる型は、後半になると疲れがでてきて綺麗なフォームを維持するのが難しいことも少なくありません。

そのため組み手ではなく型の練習で身体の柔軟性向上や、体力増強効果も期待できます。

昇級試験や昇段試験でも型を覚える数が多く、子供でもかなり高度な型を演舞しています。東京オリンピックで銀メダルを獲得した清水選出も糸東流の選手でしたね。

糸東流のもう一つの特徴として、精神鍛錬の要素を重視しているという点も注目しておきたいポイントでしょう。

和道流

和道流は松濤館流で学んだ大塚博紀氏によって創始されました。

大塚氏は松濤館流だけでなく、神道揚心流柔術や柳生新陰流といった武術でも免許皆伝を得ており、それらの技術を合わせることで和道隆を完成。

型は松濤館流の流れを組んでいますが、糸東流のように無駄のない動きや投げ技などが含まれておりより洗礼された形態となっています。

流し突きという独自の突きがあり、松濤館流の技だけでなく独自の技が豊富なのも特徴です。

伝統派の中では比較的組手を重視する傾向にあり、型で学んだ基本を実践にどのように反映するかを学べます。

沖縄空手の流派一覧

出典:沖縄空手道連合会

伝統空手の中でも空手発祥の地、沖縄で創始された空手の原型を伝承し続けている沖縄空手。

沖縄空手は中国拳法の系統を引き継ぎながら、パワーを重視する「那覇手」と、スピード感を重視する「首里手」という2つの系統に別れます。

この系統は伝統派空手にも継承されている、空手の中心的な技術です。

沖縄空手は「剛柔流」「上地流」「少林流」が三大流派となっており、近年では競技人口も増え2023年からは世界大会も開催されています。

剛柔流

沖縄空手の三大流派だけでなく、本州の四大流派にも選ばれている剛柔流。

剛柔流は那覇手の代表的な流派で、沖縄空手特有の自然な構えから相手の勢いを利用した攻撃が特徴的です。

剛柔流は三戦立ち(サンチンダチ)での足運びを重視。この三戦立ちはとても難しく、習得するのには数年は必要な技術です。

剛柔流の特徴は「守り」にあり、相手の攻撃を受けや、払いで流して反撃に転じる技術が中心となっています。

上地流

上地流は少林拳の流れをくむ拳法パンガ井ヌーンと呼ばれていました。

上地流が重要視するのは肉体の強度を極限まで高めることで、通常では鍛えることが難しい四肢の先まで鍛え、強烈な攻撃を繰り出します。

鍛錬の方法は剛柔流と同様に、三戦立ちを基本とした基本練習を重視。

沖縄空手の中でいち早く組手を練習に取り入れたのも上地流で、他の三大流派よりも組手での練習も多い傾向にあります。

少林流

少林流は「小林流」「松林流」「少林寺流」といった支流が非常に多いですが、これらの流派は全て少林流の系譜にあたります。

首里手の流れを組む流派なので、素早い手技が多いのが特徴的です。型では低めの蹴りや掛け手、手刀が多彩に取り入れられています。

自然な構えで身体に無駄な力を入れない状態にして、そこから鋭い踏み込みで一撃必殺の攻撃を放つ、瞬発力のある型が特徴的です。

自然な構えがメインだと身体を動かすのに慣れていない方でも練習しやすいので、運動経験の少ない方でも取り組みやすいですね。

フルコンタクト空手流派一覧

出典:極真会館

フルコンタクト空手は、実際に相手にダメージを与える直接攻撃を重視するという考えから生まれました。

しかし、その思想の中心には「自分自身が攻撃を受けることで、相手の痛みを知る」という考え方があります。

また実践を重視するだけでなく、伝統派空手に伝わる「和」の心もしっかりと継承されているのも特徴的です。

極真会館

フルコンタクト空手の創始者である大山倍達が、伝統派空手の寸止めルールに異論を唱えて創始したのが極真会館です。

フルコンタクト空手でも顔面や急所への攻撃は禁止ですが、極真会館は無防備に相手に近づくことを制限し常に相手の顔面への攻撃を想定した間合いを意識しています。

練習内容は決まり組手やスパークリングを重視していますが、型の練習もあり基本型の「太極その1」などは伝統派空手でも取り入れられている型です。

極真会館の中心理念には「頭は低く、目は高く、口慎んで心広く、孝を原点として他を益する」というものがあり、人格形成を通じた社会貢献を目指しています。

芦原会館

芦原会館は極真会館から独立して生まれた団体です。

極真会館の空手の基本形に相手の視覚に回り込むサバキや、攻撃を受け流して崩す技術を取り入れているのが特徴です。

相手の攻撃の流れをいなして反撃に転じるという点で、伝統派空手に通じる部分のある空手と言えるでしょう。

その一方で「誰にでも安心してでき、楽しみ楽しめる空手」をテーマに掲げており、年齢や能力に応じた練習が心掛けられています。

正道会館

芦原会館から分派して創始された正道会館は、格闘技団体K-1などとも繋がりの強い流派です。

フルコンタクト空手の中でも、格闘技の要素が強く掴みや足掛け技なども正式なルールとして認められています。

理論的に実践で相手に攻撃を当てる、相手の攻撃を避ける方法を学ぶことができる流派です。

正道会館の大会はプロ格闘技への登竜門的な存在でもあるため、将来的にプロ格闘家を目指したいと思っている方には非常に恵まれた環境でしょう。

空手を習う目的に合わせて流派を選ぼう

この記事では空手の各流派の特徴や、流派を選ぶさいのポイントを紹介してきました。

空手は流派ごとの違いよりも「伝統派空手」と「フルコンタクト空手」という系統の違いが大きいです。

伝統派空手の大きな流派は全日本空手道連盟に属しており、お互いに出稽古なども行う関係にあるほど相互の交流も頻繫に行われています。

そのためフルコンタクト空手にするか、伝統派空手を学ぶかを決めたら、できるだけ通いやすい道場に見学に行ってみるとよいでしょう。

同じ流派の中でも道場によって雰囲気もことなるので、実際に見学してみるのがおすすめです。

サイト内では地域毎の道場を紹介しているので、気になる方は一度お近くの道場を検索してみてください。

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